研究1.〈目的〉神経性食欲不振症患者(AN)のBMI(body mass index)を規定する身体的・心理的因子を検討する。〈方法〉入院AN患者24例について、入院時BMI値と以下の因子の関連を調査した。入院後の1日の食事摂取量、血中の摂食調節因子〈アシル化グレリン・ディスアシルグレリン・レプチン・血糖・インスリン〉、血清コルチゾール、心理因子(SDS、STAI、EDI)及び空腹感・満腹感の自覚症状(VAS)。統計は、単相関後に重回帰分析を施行。〈結果〉入院前の食生活を反映すると考えられる入院時BMIは、食欲促進する活性が認められていないディスアシルグレリン(β-0.62p=0.001)とEDIの成熟拒否(β-0.411p=0.016)のみに関連があった。入院後の摂取カロリーは、BMIと相関しなかった。 〈結論〉成熟拒否とディスアシルグレリンは、ANのBMIの関与している可能性がある因子である。 研究2.〈目的〉健常人の食欲がイメージによって影響を受ける機序を検討する。〈方法〉健常ボランティア90名の内被暗示性の強い12名につき構造化された催眠イメージを用いて満腹感や空腹感を与え、摂食関連ペプチド(グレリン・レプチン、NPY、PYY)や胃運動(胃電図)の変動を検討する。〈結果〉催眠イメージでは空腹感・満腹感は変動するが、摂食関連ペプチドの変動は有意に認められない。胃運動(胃電図)の変動は個々の症例によってことなる。 〈意義・重要性〉ヒトにおいては、食欲は身体的な要因だけではなく、心理的な要因に影響をうける。AN患者では、健常人と異なりレプチン・アシル化グレリンのBMIへの影響は認められず、心理的因子やディスアシルグレリンに影響をうけていることが明らかとなった。健常人において、被暗示性の強い症例を選択しても、催眠イメージによる空腹感・満腹感は、摂食関連ペプチドを介さない経路で誘発されている可能性がある。
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