18年度の本研究は、自己の情動処理の不全である「アレキシサイミア(失感情症)」傾向の強いにおける、疼痛に関する情動処理の不全と脳機能画像研究をテーマにしている。 1.まず、アレキシサイミアのリクルートのための自己記入式質問紙(TAS-20)の標準化及び妥当性の検討を行い、その本邦での有用性を確認し、さらに、年齢による得点の変化からアレキシサイミアでの発達的側面を示し、国際誌に発表した(BioPsychoSocial Medicine)。 2.上記TAS-20、及び開発した構造化面接を用いて、アレキシサイミアの高い群とそうでない群のボランティアをリクルートした。情動刺激(疼痛を受けている画像)に対して、アレキシサイミア群がどのような評価をし、さらに機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いて、課題を評価しているときの脳活動が、どのように障害されているのかについて検討を行い、国際学会への発表(American Psychosomatic Society)及び国際誌(Cerebral Cortex)への発表を行った。 (1)アレキシサイミア群においては、疼痛画像がどれくらい痛いかの評価得点が、コントロール群に比べ有意に低下していた。 (2)疼痛画像を観察してその痛みの度合いを得点化する際には、脳内では、自己が実際に痛みを受けたときに活動するのと同じ部位(pain matrix:1次・2次感覚野、島、視床、橋、小脳、前帯状回、背外側前頭前野など)が用いられていた。 (3)アレキシサイミア群においては、疼痛画像を観察して得点化する際に、pain matrixの中でも特に背外側前頭前野や前帯状回といったより認知的処理に関係する部位がより活動が低下しており、情動処理におけるより実行的・認知的な側面が障害されていることがわかった。 今後は情動の認知的な側面に関し、患者群も含めて検討する。
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