研究概要 |
これまで我々はPPARγligandであるチアゾリジン誘導体troglitazoneによって消化器癌細胞に増殖抑制、アポトーシス誘導作用、浸潤能抑制作用が誘導されることを見いだし報告してきた。一連の研究から、細胞増殖抑制作用メカニズムにp27の蓄積やMEK-ERKシグナル伝達系の抑制などが関与していることを見いだし報告してきた。今回は、がん細胞の細胞増殖や細胞浸潤に深く関与するE-cadherinの発現に及ぼす影響について実験を行い、いくつかの新知見を得た。Troglitazoneを膵臓癌細胞株のPK-1に投与すると、E-cadherinのmRNA発現とE-cadherin蛋白発現が用量依存性に亢進することがreal-timePCRおよびwestern blot, immunostainingで明らかにできた。このE-cadherinIの発現亢進メカニズムを次に明らかにしようとした。E-cadherinのtrascriptional repressorであるSnail, Slug, ZEB1, SIP-1のmRNAの発現をrea1-timePCRで検討したが、いずれの遺伝子もtroglitazoneによって発現に影響を受けなかった。更にMEK-ERKシグナルを特異的阻害剤でブロックするとE-cadherinの発現が亢進すること、細胞浸潤能が低下することが明らかにできた。以上からTroglitazoneによる細胞増殖/浸潤の抑制にMEK-ERKシグナル伝達系を抑制した結果誘導されるE-cadherinの発現亢進が重要であることが示唆された。現在更に、他の細胞接着に関わる分子について検討を進めている。
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