研究概要 |
本研究により,(1)各種のLactobacillus菌,Bacillus subtilis (B. subtilis)菌の培養上清は,ヒトおよびマウス腸管上皮細胞にHeat-shock proteinを誘導すること,(2)この培養上清は,酸化ストレスから,ヒトおよびマウス腸管上皮細胞を保護すること,(3)B. subtilis菌が培養上清中に分泌したcompetence and sporulation factor (CSF)が,これらの作用を発揮する活性物質であること,(4)同様にLactobacillus菌の培養上清にも活性物質が存在すること,(5)これら一連の生理作用は,腸管上皮細胞に発現しているNovel Organic Cation Transporters (OCTNs)が,CSFを細胞内へと輸送することにより仲介されること,(6)OCTN2の機能は,炎症性サイトカインであるTMFaおよびIFNgにて増強され,活動期クローン病患者では,その発現が増強されている例と,変化がない例が存在すること,を明らかにした.これらの成果から,腸管上皮細胞は,OCTNsなどの細胞膜トランスポーターを通して細菌産生物質を吸収することで腸内環境を認識し,それに応じて細胞防御機構の活性化などにより細胞態度を変化させ,腸管のホメオスターシスを維持するという,ユニークな宿主-腸内細菌間応答機構の存在を世界で初めて示した.また,本研究で同定した2種類のペプチドは,クローン病や潰瘍性大腸炎をはじめとする腸管炎症に対する新しい治療薬剤として臨床応用が期待される.尚,本研究成果の一部は,英文誌Cell; Host and Microbesに公表し,他の成果についても英文誌に投稿準備中である.
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