34種のヒト胃癌細胞株について、Affymetrix GeneChip Human Mapping 50K arrayを用いて遺伝子コピー数の変化およびLOHを網羅的に調べた。その結果26ケ所で欠失、31ケ所で増幅、5箇所でLOHが頻繁に見られた。これらの異常の約半数は胃癌について既報のものであるが、残りは新規であった。次に42のヒト胃癌検体においてリアルタイムPCR法などを用いてこれらの遺伝子変化の有無を調べた。その結果、3つの遺伝子について40%以上の胃癌検体における遺伝子コピー数増幅がみられ、また4つの遺伝子について35%以上の検体でLOHが観測された。臨床データとの照合によって、これら遺伝子コピー数の変化は脈管浸潤やリンパ節転移を伴った症例に多く見られた。また、LOHが1つまでの症例の予後は2つ以上のものと比べて有意に良好であった。多変量解析を行ってもLOHの部位数は生命予後に関して有意な独立寄与因子であり、ステージIおよびIIにおいても予後と有意に関連していた。本研究で発見された遺伝子異常のいくつかは胃癌発癌機序に関して示唆に富むものである。また、切除標本における遺伝子変化の検討によって、リンパ節転移を含む予後の予測が可能であると考えられた。
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