研究概要 |
2007年は、計135例の転移性肝癌患者に経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)を施行した。2004年の31例、2005年の43例、2006年の81例と比べ著明な増加である。たとえば、大腸癌肝転移では切除可能例は10〜30%とされる。また、切除後再発や高齢者等は切除を希望しない場合も多い。当科では大腸癌肝転移にRFA中心の集学的治療を行なってきた。RFAの適応は、根治を目指す場合は、切除不能または切除希望せず、5cm5個以内、肝外病変なし、主要脈管に広範に接しない、とした。腫瘍減量により予後改善を図る場合は、主病変が肝臓に存在し化学療法未施行または有効例とした。07年12月までに1864例にRFAを実施した(延べでは4379例)が、この内転移性肝癌は171例(9.2%)であり、その内訳は大腸癌107例、胃癌18例、乳癌16例、食道癌4例等であった。大腸癌107例の内訳は、年齢64.8±11.4歳(80歳以上10例)、男性65例、径3.3±1.3cm、病変数3.9±4.6個だった。80例(75%)で前治療(全身化療50例,肝切除30例,動注21例,他院RFA4例,TAE2例,VATS1例,子宮両側付属器切除1例,〔重複あり〕)がなされていた。57例は切除不能・困難と考えられたが、理由は切除不能肝外病変31例(肺18例[切除可能2例は含まず],腹膜播種9例,リンパ節9例,原発巣再発4例,骨2例,脾臓2例,卵巣1例,副腎1例,腹壁浸潤1例、[重複あり]),心肺疾患等合併7例,多発肝転移20例,肝切除後多発再発3例,断端再発3例(重複あり)だった。術前検査は胸部〜骨盤部CTとUSだけでPET等は行なっていない。治療後は3ケ月毎に胸部〜骨盤部CTと腫瘍マーカーを検査した。術後は病態により無治療、TS-1内服、FOLFOX、FOLFIRI等とした。RFA初回日を開始点とした107例の生存率は1,3,5,7年92%,67%,41%,36%で、5年生存8例、7年生存3例だった。切除可能症例50例に限れば1,3,5,7年95%,81%,64%,56%だった。合併症は消化管穿通・穿孔3例、肝梗塞3例、肝膿瘍2例、気胸1例、熱傷1例だった。従来、肝転移では切除以外には長期生存が得られないとされ、治療の第一選択は切除とされてきた。しかし、RFAを中心とした集学的治療では、切除不能例が多く含まれるにもかかわらず、肝切除と同等の生存率であり、長期生存例も少なくない。再発を早期発見し低侵襲治療を繰返すというストラテジーは肝転移でも有効と思われる。RFAは治療の選択肢に加えられるべきだろう。 多施設共同でのランダム化比較試験に関しては、現在の体制では資金等を考えても困難であり、今後どのようなスタディデザインにするかを検討中である。
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