本研究の目的は次の2項目である。(1)ヒスタミンH2受容体欠損マウス、ヒスタミンH2受容体ガストリン受容体ダブル欠損マウスの胃粘膜の解析。(2)蛍光色素(FRET)を用いた細胞内シグナルモニタリングシステムを確立し、欠損マウスの胃粘膜にも応用して、胃粘膜の切片のなかで観察を行うことで、新たなシグナル系の発見をすること。 これらのうち(1)について、現時点でデータが得られている。 ヒスタミンH2受容体欠損マウスの胃粘膜では、主細胞系の成熟異常が認められている。基本的には、頚部粘液細胞が増加して、主細胞の減少している。今回の解析で、同部位にはTFF2の発現が増加して、正常な胃粘膜の分化に必要とされるSHHの発現が減少していることが判明して、形態的データの裏づけをするデータが得られた。このデータは、胃酸分泌と胃粘膜の分化とを関連付ける重要なものであると考えている。(Journal of Pathology印刷中)さらなる解析を進めたい。 グレリンは胃から分泌される内分泌ホルモンで、成長ホルモンの分泌促進の他にも多様な作用を持っている。今回ヒスタミンH2受容体欠損マウスで、グレリンの発現を検討したところ、胃粘膜でグレリンの発現が増加していることが判明した。これも胃粘膜の分化がグレリンを通じて全身的な作用のコントロールに関与しめす点で重要なデータであると考えている。(投稿中) (2)についても鋭意研究を進めている。
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