マウスならびにラット骨髄より間質系幹細胞を分離し、その形質や多分化能を検証した。ラット骨髄からはCD29(+)CD90(+)CD34(-)CD45(-)の細胞が分離でき未分化な形質を維持しながら培養増殖することが出来た。この細胞は骨芽細胞ならびに脂肪細胞に分化誘導可能であった。マウス骨髄からも同様の細胞を分離増殖できたが、この幹細胞は胃壁より採取した線維芽・筋線維芽細胞とは明らかに形態、形質が異なっていた。 これらの骨髄由来の間質系幹細胞を、同系の動物に酢酸潰瘍を作成し病変周囲に間質系幹細胞を局所投与(移植)し、潰瘍治癒に与える影響を検討した。その結果、幹細胞を移植した動物では潰瘍治癒が有意に促進していた。未分離の骨髄由来細胞や胃から採取した線維芽・筋線維芽細胞を病変周囲に移植しても潰瘍治癒は促進しなかった。また間質系幹細胞の局所投与による潰瘍治癒促進効果はVEGFの中和抗体を投与すると抑制された。この間質系幹細胞は胃壁への移植後にその一部が平滑筋マーカー陽性となった。また移植細胞の大半がVEGFを発現していたことから、その病変治癒促進効果の少なくとも一部はVEGFを介する事が示された。1病変あたり10^7個の幹細胞を3〜5カ所に分割し粘膜下に局注することで十分な潰瘍治癒効果が得られたことから、内視鏡下に幹細胞移植を行う際の条件が最適化できた。
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