研究概要 |
【目的】モチリン受容体とそのリガンドのモチリンおよびエリスロマイシンは,消化管運動機能の調節に重要な役割を果たす因子である。申請者は,モチリンがモチリン受容体のN末端枝,第1,第2,第3細胞外ループのperimembranousなアミノ酸残基に結合すること,ペプチドリガンドのモチリンと非ペプチドリガンドのエリスロマイシンの結合部位は異なることを明らかにしてきた。今回,モチリンおよびエリスロマイシン結合後の細胞内カルシウムシグナル伝達系,および糖尿病性消化管運動機能低下例に対するモチリン受容体作働性物質の有用性を明らかにすることを目的とした。【方法】(1)モチリン受容体の第1,第2,第3細胞内ループの変異受容体を作成し,モチリンあるいはエリスロマイシン刺激による細胞内カルシウムシグナル伝達系を測定した。(2)糖尿病患者20例を対象に,全消化管におけるモチリン受容体発現を解析した。【結果】(1)モチリン受容体細胞内のTyr66,Arg136,Val299がシグナル伝達に必須のアミノ酸残基であることを明らかにした。(2)糖尿病例におけるモチリン受容体は,非糖尿病例と同様に,下部食道から遠位側大腸までの筋層内(筋細胞および筋層間神経叢)に多く発現していた。【結論】モチリン受容体細胞内シグナル伝達に必須の新たなアミノ酸残基を同定した。また,モチリン受容体アゴニストが糖尿病性消化管運動機能低下症の治療に応用できることを明らかにした。
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