研究概要 |
現在まで36名の固形腫瘍患者のプレエントリーを行い、そのうち条件の合致した1例の進行大腸癌患者(60才、S状結腸癌術後、肺,肝,腸間膜,前立腺直腸粘膜転移)に対し細胞誘導および投与を行った。誘導樹状細胞は特異的表面マーカーおよび共役分子の発現にて樹状細胞の確認を行った。誘導後の活性化リンパ球細胞はHLAA-2402拘束性にRNF43発現細胞株に特異的な細胞性細胞障害活性の上昇を認め、RNF43ペプチドパルス樹状細胞による刺激にて培養上清中の高いIFN-γ上昇を認めた。このことより誘導リンパ球は今回の標的である腫瘍抗原RNF43に対して特異的に障害するリンパ球と考えられた。誘導後のリンパ球は制御性Tリンパ球を排除するため、シクロフォスファミドを事前に点滴投与。その後活性化リンパ球および樹状細胞を投与し、当日より3日間IL-2を投与した。1週間後に樹状細胞を投与し、当日より3日間IL-2を投与した。その後、癌性腹膜炎による虚血などによる粘膜傷害および細菌感染の合併を疑う腹膜炎症状あり、絶食、抗生剤投与のため、2週間樹状細胞投与およびIL-2の点滴投与を延期した。その後、症状改善し、検査結果も臨床研究参加以前の水準に戻った為、第三回目の樹状細胞投与およびIL-2の点滴を行った。IL-2投与後ASTの上昇を認めGrade2の肝障害を認めた。IL-2による肝障害も否定できなかった為IL-2の投与量を投与予定量の80%に減量、投与した。投与終了後もAST/ALTの値はほぼ一定であり、同時に投与を行っていた抗生剤による肝機能障害と考えられた。その後も小腸その他の炎症の増悪を認めず肝障害も増悪を認めていない。また樹状細胞接種部位には投与2〜4日後にピークを迎える発赤、腫脹あり接種を繰り返すにつれて反応の増強を認めたが、明らかな腫瘍の縮小は認めなかった。各種当患者に対しては免疫検索を今後行うとともに、HLA A0201に対する抗原ペプチドを追加し適合患者を増やす予定としている。
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