研究概要 |
I.上部消化管内視鏡生検組織を用いた検討 上部消化管内視鏡生検組織を用いた検討では、昨年より症例数が増加した。慢性胃炎(化生性胃炎、萎縮性胃炎)、胃潰瘍、早期胃癌、進行胃癌症例、計272例の内視鏡的生検組織を用いて胃組織の採取し、PCR法による検討を行った結果、H.pyloriが178例(65.4%),HHLOが4例(1.4%)の陽性率を認めた。また、HHLO陽性4症例のうち3症例はH.pyloriも同時に陽性だった。されにureB遺伝子を標的とした特異primerを用いたPCRからは、H.suisが2例陽性だった。一方、MALTリンパ腫ではH.pyloriが15症例中7例(46.7%)、HHLOが6例(40%)検出された。HHLOが検出された6例のうち5例においてH.pyloriが同時に検出された。またureB遺伝子を標的とした各種特異的primerを用いたPCRからは、H.heilmanniiが1症例、H.suisが3症例検出された。以上より、HHLOとH.pyloriの混合感染とヒト胃MALTリンパ腫形成との関連が示された。 II.感染モデルによる検討 VEGF受容体抗体のマルトリンパ腫に対する効果の検討をおこなった。カニクイザルより分離、マウスに継代し、Hhとして同定、登録している菌を含んだ胃粘液を採取し、胃ゾンデによりC57BL/6マウスに感染させ、1,2,3,6,12ケ月後の胃組織を採取し、病理組織化学的検討およびVEGF受容体のFlt-1,Flk-1単独および両者の混合投与の効果を検討した。その結果、受容体抗体投与群では、いずれも著明な腫瘍縮小を投与1週間目から認めた。以上より、胃MALTリンパ腫形成におけるVEGFの重要性および受容体抗体の臨床的な有益性が示唆された。
|