研究概要 |
我々は腸管マクロファージ(Mφ)の腸管恒常性の維持と腸炎発症における役割について研究を進めており、正常マウス腸管MφはM-CSFでin vitro分化誘導されるMφに機能が類似しており、細菌貧食能を有しTNFαやIL-6を産生するがTh1誘導性のIL-12やIL-23を産生せず、むしろ抑制性サイトカインIL-10を高産生するタイプであること、この分化誘導には内因IL-10が必要であることを報告した。すなわち腸管MφはTh1型adaptive immunityへの過剰なシフトを抑制する抑制性Mφの一面を有していた。さらにTh1型腸炎自然発症モデルマウスであるIL-10 KO miceを解析した結果から同miceでは骨髄単球由来M-CSF誘導性Mφや腸管Mφに分化異常が起こり細菌認識によりIL-12とIL-23を異常産生しTh1型免疫反応が誘導されることが明らかとなった(Kamada N,Hisamatsu T, et. al.J.Immunol 2005)。さらに腸管Mφの機能をヒトCrohn病(CD)で解析することにより同疾患の病態形成における抑制性腸管Mφの機能異常の関与を明らかにし、発症機序における腸内細菌認識の制御異常の解明を目指した。ヒトCD患者の一部では末梢血からのM-CSFによるMφへの分化が障害されていることが判明し、内因性IL-10の産生低下によるものと考えられた。しかしながら、この現象は全てのCD病患者に認められたわけではなかった。そこで我々は腸管局所Mφの機能がIL-10 KO miceと同様にCD患者で変化していると考え腸管マクロファージの機能解析を行った。まず、CD腸管粘膜ではCD14+CD33+の単球由来細胞の分画比率の増加を認め、この細胞群は単離培養すると紡錘形CD68+の付着細胞、すなわちMφと考えられた。CD患者手術標本より単離されたこの腸管Mφはコントロール(大腸癌患者非癌部)、潰瘍性大腸炎患者と比較しE.coli、E.feacalis刺激に対して高濃度のIL-12とIL-23を産生した。さらにIL-23は粘膜局所のT cell、NK cellからのIFN-g産生を促進し腸管局所の免疫応答をTh-1へとシフトさせているkeyサイトカインであることがわかった。しかもIFN-gは腸管Mφの分化に影響を及ぼしよりIL-23高産生型腸管Mφへと分化誘導する作用を有していることも判明した。このようにヒトクローン病においても腸管Mφの機能異常、特にIL-23-IFN-gを中心とした炎症サイクルが病態形成に深く関与していることが明らかとなった(Kamada N,Hisamatsu T,Hibi T, et. al.J. Clin Invest in press)。
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