研究概要 |
私共はCOX-2が胃粘膜上皮細胞の保護作用、修復反応のみならず、腸上皮化生上皮、胃癌上皮細胞にも強く発現し、血管新生と密接に関連していることをこれまで報告している。この一連の検討から、私どもは今回、適当な時期にCOX-2を抑制すると、胃腺の過形成や胃腺腫発症、胃癌発症を抑制すると仮定した。スナネズミをN-methyl-N-nitrosourea(MNU)単独投与群(I群)、MNU投与h.pylori植え付け群(II群)、II群に選択的COX-2阻害薬セレコキシブを投与した(III群)に分け54週観察後胃癌発症頻度を比較した。胃癌発症頻度は(1)群で0/10匹、0%、(II)群で13/20匹65%,(III)群で5/22匹23%であった。このように選択的COX-2阻害薬は有意にh.pylori感染スナネズミの胃癌発症を抑制した。選択的COX-2阻害薬投与により、腸上皮化生粘膜との関係が強く示唆されるCdx2蛋白、MUC2蛋白のみならず、アルシャンブルー陽性腸上皮化生粘膜の免疫染色性も低下した。セレコキシブはCOX活性を抑制すると同時にCOX-2蛋白発現も抑制したことから、Cdx2蛋白発現に対するセレコキシブの効果はCOX-2阻害活性によるもの以外にCOX-2蛋白発現に関わる転写因子の抑制作用も関与するものと思われる。セレコキシブはさらにアポトーシスも促進したことから、(III)群スナネズミの胃癌発症の抑制にはセレコキシブによるアポトーシスの亢進も関与したものと思われる。以上の結果は選択的COX-2阻害薬がCOX活性の抑制と転写因子の抑制を通じて、まず腸上皮化生の進展を抑制し、これらの結果により胃癌の発症を抑制しているものとおもわれる。
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