研究課題
1.これまでの研究により、ピロリ菌シドニー株(SS-1株)に感受性を有するBALB/cマウスの胸腺細胞を採取し、ピロリ菌より抽出精製した菌体成分ウレアーゼを添加培養しても全く応答が認められなかったが、脾臓細胞に添加した場合には有意な増殖反応を示すことを見出した。このことから、この菌体ウレアーゼにはT細胞以外の脾臓細胞、即ちB細胞の活性化能が存在すると考え、B細胞をpannning法で選択的に採取し、それに菌体ウレアーゼを添加培養した。2.その結果、T細胞を完全に除去した場合にも増殖反応が認められたため、増殖反応の標的が従来のB-2細胞ではなく、自然免疫系に属するT-independentなB-1細胞であると推測した。このことを、B-1細胞の表面マーカーであるCD5指標としてマウス脾臓由来B細胞をB-1細胞とB-2細胞とに分け、それぞれに菌体成分ウレアーゼを添加培養することによって、CD5陽性のB-1細胞に対する選択的な活性化能が存在することを確認した。以上の成果をInfect.Immun.74,248-256,2006に発表した。3.そこで、一般にB-1細胞はリウマチ因子などの自己抗体を産生することに着目し、精製B-1細胞に菌体成分ウレアーゼを添加しその培養上清中の自己抗体を測定したところ、抗核抗体、リウマチ因子、抗phosphatidyl Choline抗体などの自己抗体が検出された。そこで、ピロリ菌陽性リウマチ患者の活動性とB-1細胞数を追跡したところ、実際にリウマチ因子の量が多いほど末梢血中のB-1細胞数が多いことを確認した(論文作成中)。本年度は、菌体成分ウレアーゼがB-1細胞上のどのような分子を介して活性化されるかを明らかにし、その分子をブロックするような抗体を用いて自己抗体の産生を抑制し、ピロリ菌感染に伴う病状の進行を止めるような新たな手だてを模索する。
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