研究概要 |
ラット大腸発がんモデルを用いて、ACF-D(II)(正常腺管と同程度もしくは小さな腺管で構成され、従来の染色法では検出困難な異型病変)の発生機序を明らかにし、de novo癌の初期病変のモデルとなりうるかを検討し、de novo癌の初期病変の性質を解明することを目的とする。本年度は、ラットACF-D(II)の発生機序の遺伝子特異的な検討を、AOM(azoxymethane)で誘発された病変を用いて、Snd1,Runx3に関して、免疫組織学的に解析した。 Snd1は、RISCの構成成分の一つであり、遺伝子の翻訳制御に関与すると考えられている。non-dysplasticACFの約半数に、ACF-D(I)では、14例中13例、ACF-D(II)では、4例全例にSnd1の蓄積が認められ、ACF-D(I)とACF-D(II)で違いは認められなかった。 Runx3は、TGF-β superfamilyの標的分子であり、ヒト大腸がんで、LOHやプロモーター領域のメチル化が報告されており、また、がん抑制遺伝子ではないかと推定されている。ACF-D(I)5例では、Runx3の喪失は認められなかったが、ACF-D(II)4例全例でRunx3の喪失が認められた。 ACF-D(II)では、ACF-D(I)よりもRunx3の喪失が起きやすい可能性が示唆された。PhIPで誘発された病変では、ACF-D(I)4例、microadenoma 7例、腺癌4例で、各々、0、2、2例でRunx3の喪失が認められた。PhIP誘発腫瘍では、約半数のみにRunx3の喪失が認められたことから、AOM誘発のACF-D(II)及び腫瘍で、Runx3の喪失が起きやすい可能性もある。更に例数を増やして、Runx3の喪失が、ACF-D(II)特異的な現象か否かを検討する必要がある。
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