研究概要 |
ACF-D(I)は従来のACFに属する異型病変である。ACF-D(II)は正常腺管と同程度もしくは小さな腺管で構成され、mucinの喪失が認められ、異型度が高い病変であり、従来の染色法では検出困難であるが、分別染色法(Ochiai et al.,Cancer Lett,220:67-74,2005)で検出可能である。ラット大腸発がんモデルを用いて、ACF-D(II)の発生機序を明らかにし、de novo癌の初期病変のモデルとなりうるかを検討し、de novo癌の初期病変の性質を解明することを目的とする。AOM誘発大腸病変を用いて以下の解析を行なった。 1.ラットACF-D(II)の発生序の免疫織学的角析による遺云子特的な検討 Mucinの喪失が認められたACF-D(II)全例で、大腸の粘液の主成分であるMuc2蛋白質が喪失していたが、Muc5AC蛋白質(胃の粘液に主として発現)の異所性の発現は認められなかった。又、Muc2遺伝子プロモーターを介して発現を活性化するCdx2蛋白質に関しては、周囲の正常組織と比して発現変動はなく、ACF-D(I)に関しても同様であった。 TGF-βsuperfamilyの標的分子であり、がん抑制遺伝子と推定されているRunx3の喪失に関しては、ACF-D(I)5例では認められず、ACF-D(II)では4例全例で認められた。ACF-D(II)では、ACF-D(I)よりもRunx3の喪失が誘発されやすい可能性が示唆された。Runx3の喪失がACF-D(II)特異的な現象か否かを、更に例数を増やして検討する。 2.ラットACF-D(II)の発生機序のゲノム網羅的な検討 大腸腫瘍3例に関して、アレイCGHによりゲノム網羅的なコピー数変化を解析したが、大きな変化は認められず、大腸前がん病変であるACF-D(II)でも同様であると予想された。
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