研究概要 |
ストレス反答キナーゼp38MAPKは種々の細胞外ストレスによって活性化され、細胞生存やアポトーシスに関わるシグナル経路を細胞依存性に制御する。我々はこれまで、消化器癌の中で最も難治癌である膵癌細胞において、p38MAPKが抗癌剤ゲムシタビンによって強く活性化され、癌細胞の細胞死誘導に重要な役割を担うことを報告してきた(Cancer Res 2004,Biochem Biophys Res Commun 2004,Anticancer Res 2005)。すなわち、p38MAPK活性化を阻害すると抗癌剤ゲムシタビンに対する感受性が低下することを見いだし、p38MAPK経路はゲムシタビン感受性の制御に関与することを報告してきた。一方、膵癌は抗癌剤に低感受性で容易に耐性を獲得するため、消化器癌の中で最も予後不良であることが知られている。我々はゲムシタビン耐性誘導株を膵癌細胞で作成し、親株に比べてp38MAPK活性の低下が見られること、さらに非チロシン型キナーゼであるSrc活性の亢進することを新たに見いだしている。これらは耐性化獲得の過程で出現しており、今後の抗癌剤治療や耐性回避の重要な新規標的になりうると考えられる。最近、ゲムシタビンへの耐性獲得過程におけるp38MAPK活性化の関与を明らかにする一連の研究において、ゲムシタビンの細胞内代謝酵素であるdCK, hENTI, RR-Ml,-M2の発現比が獲得耐性を予測する指標となりうることを明らかにし新たに報告した(BrJCancer2007)。
|