研究概要 |
平成19年度はラットならびにヒト膵星細胞におけるToll-like receptors (TLRs)発現ならびに細胞機能調節について検討した。いずれの膵星細胞においてもグラム陽性菌を認識するTLR2、グラム陰性菌のLPSを認識するTLR4をはじめTLR3、TLR5の発現がみられ、細菌のみならず真菌やウイルスを膵星細胞が認識しうることが明らかになった。膵星細胞をTLR2のリガンドであるlipoteichoicacid、TLR3のリガンドであるpolyinosinic-polycytidylicacid、TLR4のリガンドであるLPS、TLR5のリガンドであるflagellinにて刺激するとNF-kappaBやMAP kinases (ERK, JNK, p38MAP kinase)といった広範なシグナル伝達系の活性化が認められた。これらのTLRリガンドは膵星細胞からのMonocyte chemoattractant protein (MCP)-1やCINC-1(IL-8のラットホモログ)をはじめとするサイトカインやケモカイン、さらに誘導型NO合成酵素の発現を強く誘導した。さらに蛍光標識したdextranやlatex beads、大腸菌を用いた検討により、膵星細胞やendocytosisやphagocytosisにより非自己を認識、処理することが明らかになった。これらの知見は、膵線維化形成における細菌やウイルス感染の関与を示唆するとともに、膵星細胞が膵臓の局所免疫に関与する可能性を示唆する。
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