研究概要 |
1.<肝細胞特異的PTENノックアウトマウスの作成>実験で用いる肝細胞特異的PTENノックアウトマウスを作成し,NASHの動物モデルを確立した。 2.<初代肝細胞培養の樹立>肝細胞特異的PTENノックアウトマウスから肝細胞を単離後,初代培養肝細胞の樹立に成功した。 3.<樹立した初代培養肝細胞におけるROSを惹起する種々の刺激に対する反応>初代培養肝細胞にH2O2,Tert-butyl hydroperoxideを加えてから60分後には,Cell viabilityが20%まで低下した。また,肝細胞内のdichlorodihydro-fluorescein diacetate(DCFDA)の蛍光強度も約3倍上昇し,ROSに対する感受性を示した。 4,<confocal laser microscopyによる初代培養肝細胞のミトコンドリア障害の可視化>3.で示したROSを惹起させる様々な刺激を加えた後,60分後にはmitochondrial permeability transition(MPT)が生じ,ミトコンドリアの膜の脱分極が生じた。 5.<PTENノックアウトマウスの肝病変に対する抗酸化ストレス剤のin vitroにおける効果>3.で示したROSを惹起させる様々な刺激を加える前に,抗酸化剤であるN-acetyl cystein(NAC)をpre incubationするとcell Viabilityが著明に改善し,また肝細胞内のROSも約1/3に軽減した。また,NACはMPTと,ミトコンドリア膜の脱分極を抑制した。よって,NACは肝細胞内のROSを軽減することによって,ミトコンドリア障害を抑制し,肝細胞保護作用を示すことが示された。NACがin vivoでも効果があるか否かや,その作用メカニズムを明らかにするとともにin vivoで効果がある新たな薬剤候補を検討することを次年度の課題としたい。
|