研究概要 |
<PTEN KOマウスの肝病変に対する薬剤のin vivoにおける効果> PTENノックアウトマウスに脂肪肝の発症や酸化ストレスを抑制する薬剤であるN-acetyl cystein (NAC), Eicosapentaenoic acids (EPA), Ursodeoxycholic acid (UDCA)を投与し,肝への脂肪沈着,炎症細胞浸潤,線維化,発癌等を抑制することができるか否か検討した。薬剤投与は離乳直後とし,40週齢と70週齢で脂肪性肝炎と肝癌の肉眼的,組織学的改善の有無を評価した。また,血中肝胆道系酵素,脂質,ラジカル生成能と肝組織における脂肪含有量,脂肪酸分画,抗酸化・脂肪酸合成酵素関連遺伝子の発現を10週齢,40週齢で検討した。 NACは、細胞内還元型glutathioneを増加させ,reactive oxygen species (ROS)を消去することにより肝炎を抑制したと考えられたが,SREBPlcの発現は抑制されず,したがって肝の脂肪化は抑制されなかった。EPAとUDCAは,SREBPlcの発現減少により肝脂肪化を抑制し,オレイン酸/ステアリン酸比の低下とERKのリン酸化減少に基づいて発癌を掃制した。EPAとUDCAによる肝炎抑制の背景はROSの減少であったが,EPAはn3/n6比の上昇と抗酸化酵素の発現増加に基づいて肝内ROSを制御していると考えられた。さらに,EPAは,Aktのリン酸化は抑制しないが,AMPKα1の発現を増加させることが明らかになり,EPA投与によるSREBPlcの発現の調整は,AMPKを介する経路が関わっていることが考えられた。以上,NAC, EPA, UDCAは,異なった作用機序に基づいてPten KOマウスの脂肪肝,脂肪性肝炎,肝癌の増悪を抑制しており,これらの薬剤を併用することによりNASHを効果的に治療できると考えられた。
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