研究概要 |
非アルコール性脂肪性肝炎(Non-Alcoholic Steatohepatitis,NASH)は,アルコール飲用がないにも関わらず,アルコール性肝炎に類似した組織像を呈する疾患群である。肥満や糖尿病などの生活習慣病が増悪因子と考えられているが,病因,機序については,未だ不明な点が多い。CAR(constitutive androstane receptor)はcytochromeP450(CYP)などの薬物代謝酵素群の発現調節を行う核内受容体である。Peroxisome proliferators-activated receptor(PPAR)-alphaやPPAR-gammaなどの核内受容体が,NASHの病態に深く関連していることが知られており,核内受容体CARのNASHの病態における役割を明らかにするために本研究を行った。 NASHの食餌性モデルにおいて核内受容体CARのKOマウスではWTマウスに比べて,NASHの程度が有意に軽かった。すなわち,核内受容体CARはCYPなどの酵素を誘導し脂質過酸化を起こすことにより,肝障害,肝線維化を悪化させる可能性が示唆された。本研究によって,NASHの食餌性モデルにおいてCARの存在は,肝障害と肝線維化を増悪することがはじめて明らかになった。平行して行った臨床症例での検討で,NASHに合併した肝臓癌症例を臨床病理学的に検討し報告した。今後は,さらにCARを抑制することにより,NASHの発症及び線維化抑制の有無を検討する方針であり,CAR及び核内受容体を標的としたNASH治療薬の開発を目的とした研究を継続したいと考える。
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