当院においてIPMN(Intraductal papillary mucinous neoplasm)にて悪性が疑われたため切除された膵嚢胞性病変22症例を解析した。対象症例は平均年齢64.6才(42-76才)、男性15例、女性7例、膵嚢胞性病変の膵局在は頭部15例、体部6例、尾部1例であった。21例中7例に癌を認め、組織型細分類でpapillary adeno(carcino)ma18例の内訳はgastric type 10例、intestinal type 7例、oncocytic type 2例、pancreato-biliary type 0例であり、その他はtubular adenoma 2例、乳頭状増殖を認めない拡張膵管が1例であった。レーザーマイクロダイセクションを用い、腫瘍本体の腺管部分を切り出してDNAの抽出を行い、K-ras、B-raf、PI3Kのhotspotについて変異検索を行った。数例を除きDNAはPCRにて良好に増幅され、direct sequenceが可能であった。K-ras変異は増幅可能であった18例中9例(50%)に認めた。組織型別ではgastric type 6/9(66%)、intestinal type 3/6(50%)、oncocytic type 1/2(50%)と組織間で有意差は認めなかった。Tubular adenoma 2例ではK-ras変異を認めなかったが、このうち1例でB-raf変異を認めた。Adenocarcinomaの成分を伴う7例中K-ras変異を伴うものは3例(43%)で、adenomaのみの症例と比較して頻度に差を認めなかった。このようなcarcinomaの成分を含むがadenoma部分で変異を認めないような症例でレーザーマイクロダイセクションを用いた遺伝子検索の追加、ならびにSMAD4、p16、p53、Chk2などの免疫染色を用いた膵癌発生に重要な癌抑制遺伝子の発現を評価し、膵発癌機構を引き続き検討する予定である。
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