研究課題/領域番号 |
18590720
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
多田 稔 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (80302719)
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研究分担者 |
立石 敬介 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20396948)
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キーワード | IPMN / レーザーマイクロダイセクション / Gastric type / K-ras変異 / p16LOH |
研究概要 |
IPMN (Intraducal Papillary Mucinous Neoplasm)は膵癌の前癌病変の1つと考えられている。最近、組織学的な乳頭構造の違いや粘液ムコ多糖蛋白(MUC)の発現様式により組織亜型分類が行われるようになった。亜型の違いにより悪性度、予後に違いがみられることから、その背景となる遺伝子異常のパターンについて検討した。対象は当院にて切除されたIPMN22例である。その内訳は、Gastric type (Ga)11例、Intestinal type (Int)7例、Oncocytic type (Onc)2例、Tubular adenoma (Tub)2例であった。レーザーマイクロダイセクション法を用いて腫瘍細胞のDNAを抽出し、前年度に解析したK-ras、 B-raf、 PI3Kの変異に加えて、FHIT、p16、SMAD4のLOHについて検討した。その結果、K-ras変異はGa8/11例、Int2/7例、Onc1/2例、Tub0/2例であった。p16のLOHはGa6/6例、Int1/5例、Onc2/2例、Tub0/2例であった。B-rafの変異はGa2例、Int1例、Tub1例に認めたのみであった。PI3Kについてはいずれも変異は認められなかった。FHIT、 SMAD4のLOHについては組織亜型間の有意な違いは認められなかった。低悪性度とされるGa群と非Ga群に分けて解析したところ、Ga群にてK-ras変異、p16LOH陽性率が有意に高かった。以上、Ga群に高頻度の遺伝子異常が認められ、膵癌の遺伝子変異により近い結果であった。IPMNからの膵癌への進展において、IPMNの組織亜型により発癌の機序が異なる可能性が示唆され、出現してくる膵癌の性質も異なる可能性が考えられた。
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