研究概要 |
1.肝移植後C型慢性肝炎(CHC)症例の肝組織中NK細胞分画 NK細胞はCD56の発現強度により機能の異なるCD56^<+bright>とCD56^<+dim>分画に分けられるが,CD56^<+bright>NK細胞は末梢血中と比較して肝組織中で有意に増加しており,肝内NK細胞中のCD56^<+bright>の割合は正常肝と比較して有意に低下して活性化CD56^<+dim>NK細胞の増加が認められたが,通常のCHC症例との有意差は認められなかった。NK細胞レセプターではCD56^<+bright>における抑制性レセプターNKG2A発現が正常肝と比較して有意に高値を示した。肝内CD56^<+dim>におけるCD69発現は正常肝と比較して有意に増加しており,高活性化状態にあると考えられたが,通常のCHCとは有意な違いは認められなかった。通常のCHC症例においては,インターフェロンとリバビリン併用療法前後の肝生検組織の解析によりNK細胞の変動と治療効果との関連を明らかにしたが,免疫抑制剤使用下であっても肝内NK細胞におけるTRAILやCD69発現などは通常のCHCと同様であり,移植後CHCにおいてもNK細胞が肝細胞障害に関与している可能性が示唆された。 2.肝生検組織中の遺伝子発現網羅解析 検討可能であったのは肝移植後CHC症例5例であり,通常のCHC症例の肝組織中と比較して著明な発現の違いは認められなかったものの,発現の違いが認められた一部の遺伝子について今後も症例数を増やして検討する。 3.新規免疫調節療法の開発 現時点で免疫調節療法の標的となりうる細胞群・分子は明らかに出来なかったが,CHCに対する治療効果との関連からもNK細胞の制御による治療法開発の可能性について今後も検討を続けたい。
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