[目的]慢性膵炎は、アルコールの多飲などによって起こる膵の進行性炎症性疾患である。近年、欧米の慢性膵炎患者では膵導管細胞に発現するイオンチャネルであるCFTRチャネル遺伝子の変異は慢性膵炎の発症のリスクファクターの一つであると考えられている。本研究では、平成18年度に続き慢性膵炎発症におけるイオンチャネル及び水チャネルの役割の解析を目的とした。[方法](1)ヒト野生型CFTR遺伝子にL1156F変異を導入した。HEK293細胞に変異を導入したプラスミドを導入した。野生型及び変異型蛋白量は、抗CFTR抗体を用いた免疫ブロッティング法で定量した。(2)モルモットの単離小葉間膵管をRNA干渉法を用いてCFTR遺伝子特異的に発現を抑制した。単離膵管のCFTR発現量は抗CFTR抗体を用いた免疫ブロッティング法で検討した。[結果](1)L1156F CFTR変異をHEK293細胞に発現させると、野生型に比べて発現量は50%に減少していた。(2)RNA干渉法を用いてモルモット単離小葉間膵管のCFTR遺伝子発現を抑制すると、scrambled RNAを用いた対照群に比べて発現量は約50%に減少していた。この遺伝子発現量の減少は、単離小葉間膵管の水分泌量の減少量と一致していた。[結論]日本人慢性膵炎患者で見られる軽度なCFTR発現量の減少でも、膵導管細胞からのイオン・水分泌量は有意に減少しており、慢性膵炎発症の原因となる可能性が明らかとなった。
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