国内外のゲノム情報基盤の整備とトランスクリプトーム解析の確立によって、ヒントになる疾患組織・細胞内での遺伝子発現の挙動がみられるようになったこと、タンパク質のMS技術が進んだため適切な分画を行えばタンパク質のディファレンシャル解析が出来るようになりつつあること、適切な病態モデルと発症時間にそった疾患サンプルがあれば「疾患パスウェイ」の解析が出来る状況が可能になった。そこで、今回われわれは、最新のプロテオミクス解析を用いデファレンシャルプロテオーム解析システムを構築し、肝がんの診断、治療等の指標に有用なバイオマーカーの探索を行う。 実験結果として、癌部、非癌部の遺伝子発現の検討において様々な増殖やアポトーシス関連、stat3の下流の遺伝子変化が確認された。また、AG490によるstat3シグナル抑制による遺伝子変化の検討で様々な増殖やアポトーシス関連、stat3の下流の遺伝子変化が確認された。また、肝癌組織におけるリン酸化stat3の発現検討において肝癌細胞ではリン酸化stat3の高発現が確認された。さらに、AG490によるアポトーシス関連蛋白の変化では、AG490処理にてXIAPやsurvivinなどのアポトーシス抑制蛋白の有意な発現低下を確認した。最後にAG490の細胞周期への影響を調べAG490によりS期アレストを確認した。 今回、我々は、肝癌における遺伝子発現プロファイルを解析し、アポトーシス関連遺伝子や、stat3関連遺伝子の発現の変化を確認した。さらに、人の癌組織にてリン酸化stat3が高発現していることを証明した。Stat3のリン酸化を抑制することにより、アポトーシスや細胞周期関連蛋白の発現変化を確認した。これらの遺伝子発現変化は、肝癌特異的であり、診断に役立つ遺伝子群を特定できた。
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