研究概要 |
近年、病態プロテオミクスにおける血中ペプチドの重要性が指摘されている。病態時における細胞においては、疾患関連タンパクの分泌、プロテアーゼによる分解が行われており、いわゆるペプチドームの産生源となっていると考えられている。しかし、このような低分子量のペプチドを網羅的、包括的に解析した研究はない。そこで、我々は、この血液中ペプチド解析により新たな肝疾患進展の病態を解析し、病態責任タンパク質分子を明らかにし、肝癌を含む肝疾患のバイオマーカーの同定を試みた。そこで、本研究では特に質量5000以下のペプチドを中心に網羅的に解析した。血中のペプチドを網羅的に解析するために、血清サンプルを前処置後SCXおよびC18カラムを用いた2D-μHPLCにより6x190=1140に分画し、それぞれの分画をMALDIプレートにスポット後、質量分析による計測を行い、その結果をディファレンシャル解析ツールにより解析した。その後に再調整することなくMs^n測定により、タンパク・ペプチドの構造決定をした。本法によって、包括的かつ網羅的なプロテオーム解析が可能になった。 この方法を用いて、肝癌患者血清で増加し、診断に有用なペプチド断片を30個以上同定した。これらの半数以上はがん細胞関連タンパク質であった。また、これらのペプチドを腫瘍マーカーとして用いると、既存のAFP,DCPとのコンビネーションアッセイにて、93%以上の高い感度を得ることが出来た。また、これらのバイオマーカー・ペプチドを免疫沈降後、質量分析によって解析するImmuno MS法により、血中にある低濃度のペプチドを同定、定量を行うことができた。また異なった糖鎖修飾を受けたペプチドを同定でき、肝癌患者において特異的な発現パターンを呈することが確認できた。
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