研究概要 |
我々は、C型慢性肝炎(CH-C)において鉄過剰が認められること、血清Hepcidin蛋白は増加しているものの鉄蓄積の程度にくらべ分泌が不十分であることを明らかにした。また、CH-Cの肝組織では酸化ストレスが増加しており、その程度は鉄沈着の程度と強い相関を示すことを明らかにした(8-OH-dGと血清フェリチン値との相関:r=0.565,p=0.0004,8-OH-dGと肝鉄沈着スコアとの相関:r=0.403,p=0.0119)。さらに鉄沈着の強い患者はInterferon(IFN)/Ribavirin治療抵抗性であり、経過観察中の肝癌の発生が有意に多いことも明らかにした。 このように、CH-Cでは強い鉄過剰があるにもかかわらずHepcidinの分泌調節不全があり、腸管からの鉄吸収にnegative feedbackがかからない。その結果、肝組織における鉄の沈着が増加し、酸化ストレスにより産生した活性酸素種による核酸障害が蓄積して肝癌が発生するという一連の流れを証明することができた。 HCVによる鉄過剰のメカニズムを明らかにする目的で、C型肝炎ウイルス(HCV)のfull genomeを導入したレプリコン細胞を用いてtransferrin receptor2(TfR2)およびHepcidin mRNAの発現変化を検討した。その結果、HCV感染肝細胞においては、IL-6を介した発現調節は保たれているものの、TfR-HFEを介したHepcidinの発現調節機能が失われていることを示唆するデータが得られた。このことは、CH-Cの臨床におけるHepcidinの分泌不全を部分的に説明できると考えられた。
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