Tumor necrosis factor related apoptosis inducing ligand(TRAIL)は、TRAIL受容体(DR4、DR5)を介して腫瘍細胞特異的にアポトーシスを誘導する。しかし、胆管細胞癌においてはTRAILに対するアポトーシス抵抗性を持つことが報告されている。その機序については未だ不明な点も多く、今回申請した研究において胆管細胞癌におけるTRAILに対するアポトーシス抵抗性の機序の解明を目的とし、今年度は以下の研究実績を得た。 1.胆管細胞癌におけるTRAIL及び関連分子発現状況の解析 胆管細胞癌組織標本を用いてTRAIL及びレセプター、関連する因子についての免疫組織学的検討を行った。TRAILの発現は、正常組織においては認められず、胆管細胞癌において強い発現を認めた。また、レセプター(DR4、DR5)は正常組織部分との発現状況の差は認めず、アポトーシス制御因子(Bax、Bcl-2)についても差は認めなかった。しかしながら、Mcl-1は癌組織において強い発現を認めた。次に、胆管細胞培養株におけるTRAIL関連分子発現状況について解析を行った。癌組織における検討と同様、レセプター(DR4、DR5)の発現には差を認めず、Mcl-1の発現はTRAIL抵抗性を持つ株において強い発現を認めた。 2.TRAILによるアポトーシス誘導実験 リコンビナントTRAILを用いて細胞株におけるTRAIL感受性試験を行った。JNKシグナルに関しては阻害剤による感受性の増強を認めなかったが、NF-KB阻害剤によりTRAIL感受性の増強を認めた。 3.TRAIL遺伝子のプロモーター解析 正常組織、癌組織から得られたTRAIL遺伝子のプロモーター部分の解析中であるが、IFN-γによるTRAIL誘導能の差に関連する遺伝子異常は指摘できていない。
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