本年度は、昨年度困難であった、線維芽細胞(NIH3T3-L1)のスフェロイド化についての検討を主に行った。線維芽細胞は、in vitroでは本来細胞-細胞間の接着よりも細胞基質問の接着性が強く、スフェロイドへの形質転換が起こりにくい細胞である。この問題を克服するために2つの方法を試みた。第一にスフェロイド形成の際に必修な増殖因子である、Epidermal growth factor(EGF)のシグナルを強力にするために、EGF受容体を強発現させる方法を試みた。NIH3T3-L1の親株にあたるNIH3T3細胞のvariantでEGFへ反応しないNIH3T3-NR6株細胞とその株にEGF受容体を遺伝子導入した細胞の双方でEGF刺激状態でのスフェロイド形成能の比較を行った。その結果、EGF受容体シグナル強化細胞でもスフェロイド化は困難であることが判明した。第二に、癌抑制遺伝子RUNX3遺伝子の導入を試みた。RUNX3は、当該研究者らの研究により細胞接着をコントロールすることが判明している。RUNX3遺伝子の導入は、細胞-細胞間の接着をcadherinの発現を亢進させることにより強めることが判明した。また、RUNX3の導入によりNIH3T3細胞は、非導入細胞に比較してスフェロイド化しやすくなった。細胞の脂肪化をがIBMX+デキサメサゾンでインダクションできるNIH3T3-L1株でも同様にRUNX3遺伝子の導入でスフェロイド化が可能であり、NASHのin vitroモデルになりうることが判明した。
|