研究概要 |
HCV全遺伝子が組み込まれたトランスジェニックマウス(HCV TgM)を用いて、HCVタンパクが鉄代謝に与える影響について検討した。肝臓におけるhepcidin nRNAおよびprohepcidinのタンパク発現レベルはHCV TgMがコントロールマウスに比べて有意に低く、これに対応して十二指腸ならびに脾臓における鉄汲出しタンパクであるferroportinの発現はHCV TgMで亢進していた。肝臓内の鉄蓄積はKupffer細胞にも認められたが、肝細胞優位であった。一方、肝細胞内の鉄蓄積に応じてferritinの発現は亢進し、transferrin receptorlの発現は低下しており、iron regulatory protein(IRP)/iron response element(IRE)の調節は正常に機能していると考えられた。Lipopolysaccharide(LPS)の腹腔内投与により肝臓内のIL-1β,IL-6,TNF-α濃度が上昇し、これに伴いhepcidinの発現も亢進した。したがって炎症性サイトカインによるhepcidinの誘導能も機能していると考えられた。HCV TgMのprimary hepatocyteにhepcidin promoterをtransfectionしreporter assayを行ったところ、HCV TgMではhepcidin promoter活性が低下していることが明らかとなった。転写因子のひとつであるC/EBPαがhepcidin promoter活性に関与することが報告されているため、C/EBPαのDNA binding activityを測定したところHCV TgMでは有意に低下しており、肝内の活性酸素の産生が亢進していた。以上より、HCV誘導性の活性酸素がC/EBPαのDNA binding activityを低下させることによりhepcidin promoter活性を低下させ、肝内の鉄蓄積を引き起こすと考えられた。
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