研究概要 |
我々の開発したHBV-Alu PCR法は,肝組織における微量のHBV組み込みを高感度に,迅速に同定できる方法であり,漫性肝炎組織におけるHBV組み込みの検出にはこの方法が最も優れていると考えられる.このHBV-Alu PCR法を用いて,26例の慢性肝炎組織,10例の肝癌組織と癌周囲の非癌組織からHBVが宿主配列に組み込まれている部位を増幅し,プラスミドにクローニングした.慢性肝炎組織より60クローン,肝癌組織より5クローン,非癌組織より10クローンのHBV組み込みと近傍のヒト配列を同定しえた.データベースや過去の文献におけるHBV組み込み部位と本研究によって得られたクローンを合わせて解析することにより,異なる肝組織で共通の場所に組み込みが見られるcommonintegration siteとして,human telomerase reverse transcriptase(hTERT)遺伝子とMLL4遺伝子が同定された.しかし,これらはすべて肝癌において組み込みが報告されているものばかりであった.特にhTERT遺伝子は,肝癌において約5%に組み込みがあると推測され,HBV関連の肝発癌において重要な遺伝子であると考えられた. このhTERTへの組み込みが慢性肝炎から肝癌に至るどの過程で起こるのかを知るために,慢性肝炎組織20例においてhTERTへの組み込みがあるかどうかを,hTERTに設定したプライマーとHBVのX領域に設定したプライマーを用いて検索した.この方法では,漫性肝炎組織や担癌患者の非癌組織にはhTERTへの組み込みは検出されず,hTERTへの組み込みは肝発癌に近い時期に起こるeventであることが示唆された.
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