研究課題
HCVは肝細胞トロピズム以外にリンパ球系細胞など臓器トロピズムの異なるHCVが存在する。このことが肝外病変発症と関連する可能性がある。本研究ではC型肝炎患者の末梢血リンパ球からB細胞を分離し、B細胞中で複製するHCVをスクリーニングした。また、そのB細胞トロピズムを持つHCVの全塩基配列を解析した。また、B細胞トロピズムを持つHCVの患者内での病原性について検討した。C型慢性肝炎患者75例を検討し、CD19で分離されたB細胞中HCV RNA陽性率は48例(64.0%)と他のリンパ球分画(CD4+,11.5%;CD8+ T細胞,13.5%)と比較して優位に高頻度であり、かつウイルス量も有意に高値だった。またこの75例でLPDマーカー及びB細胞clonalityなど何らかの異常を示す患者はC型肝炎患者の約70%と高頻度だった。これらの異常と関連する因子の探索として、単変量及び多変量解析を用い、B細胞中HCV RNA陽性が独立した寄与因子として抽出された。HCVのB細胞感染、あるいはHCVとB細胞とのassociationがLPD発症に関与することが示唆された。またインターフェロン、リバビリン併用療法で持続ウイルス陰性化(SVR)が得られた患者のB細胞中HCV RNA及びLPDマーカー異常の推移を観察すると、SVR患者の中にLPD異常が持続する症例が確認された。このことからHCV由来のLPD異常に一部不可逆的変化が存在することが明らかとなった。B細胞中HCV陽性患者10例と陰性患者2例の血清中HCV RNA全塩基配列を比較してみると、両者に大きな差異は認めなかった。HCVレセプターの一つと考えられ、B細胞上に高発現しているCD81の結合領域はE2蛋白領域に2箇所存在する。同結合部位の配列はCD81 binding domain 1で4箇所、CD81 binding domain 2で1箇所、variationに富む領域が確認された。しかし、B細胞トロピズムを持つHCVに特徴的な配列は確認されなかった。また他領域と比較して保存性が高いIRES領域に多様性がある症例がB細胞トロピズムを持つHCV感染者の血清から確認されたが、現在翻訳効率への影響などを検討している。
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