膵癌のdesmoplasiaには細胞外基質、活性化膵星細胞(PSC)、免疫細胞などが混在し、膵癌の悪性度を高める方向に相互に作用する。前年度までの研究で、PSCには他の抗原提示細胞のようにphagocytosisの作用があることを確認したので、本研究ではPSCの抗原提示細胞としての細胞性免疫への関与について検討した。まず、ヒトあるいはラットのPSCを分離、培養後、FITCで標識したovalbumin(OVA)を投与し、PSC内へのendocytosisについて検討した。また、GM-CSF、INF-γ、IL-4、ionomycin、PMN、あるいはFITC-OVAでPSCを刺激し、ラットではMHC class IとMOH class IIを、ヒトではHLA-DRをflow cytometryにて、また、MOH class II α chainとβ chain遺伝子発現をRT-PCRにて測定した。その結果、ラットPSCではMHC class I発現を認めたが、GM-CSF、INF-γ、IL-4、ionomycin、PMNのいずれの刺激によってもMHC class IIの発現は誘導されなかった。また、Dual-color flow cytometryでOVAはPSCの95%以上こ取り込みを認めたが、MHC class II発現の誘導はなかった。MHC class II α chainとβ chainは遺伝子発現レベルでも確認されなかった。同様に、ヒトPSCにおいても、GM-CSF、INF-γ、IL-4、ionomycin、PMN刺激は、HLA-DR発現を誘導しなかった。以上の結果から、PSCにおけるMHC class II分子の発現は誘導されず、肝星細胞(HSC)はMHC class IIを介して抗原提示細胞としてTリンパ球を活性化することが報告されているが、PSCはHSCと異なり抗原提示細胞として細胞性免疫への関与はないと思われる。
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