研究課題
自己免疫性膵炎の発症や病態における制御性T細胞(Treg)やIgG4の意義については不明である。本研究は、自験臨床例と膵炎動物モデルを用いて、末梢血TregやIgG4の解析を行うことにより、自己免疫性膵炎の病因や病態におけるIgG4やの関与を明らかにすることを目的として遂行された。AIP患者では末梢血中ナイーブ制御性T細胞(FoxP3^+CD4^+RA^+CD25^<high>)の有意な低下を認めることが自己免疫異常の発症に関係する一方で、メモリー制御性T細胞(FoxP3^+CD4^+RACD25^<high>)は有意に増加するとともに、血中IgG4値と正の相関のあることを明らかにした(Pancreas.2008;36:133-40.他)。線維化に関わるTGF-βは血中レベルでは、自己免疫性膵炎と他の原因の慢性膵炎患者間で差異は認められなかった。また、膵炎自然発症モデルであるWB/Kobラットを解析すると、膵炎だけでなく、胆管炎、唾液腺炎、涙腺炎、腎炎など、ヒト自己免疫性膵炎と類似の膵外病変を認め、自己免疫性膵炎の動物モデルとして有用であることを示した。さらに、WB/KobラットではTregが減少しており、野生型正常ラットより分離したTregを骨髄内骨髄移植法により移入することにより、膵炎だけでなく膵外病変の発症を抑制でき、Tregの減少が発症に関わる可能性を示唆した。以上より、胸腺由来のナイーブ制御性T細胞の減少が発症に関与するとともに、末梢でのメモリー制御性T細胞は反応性に増加し、IL-10産生の亢進を介して、IgG4へのクラススイッチを誘導し、IgG4陽性形質細胞の浸潤や血中のIgG4上昇に関与することが考えられた。
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Pancreas 36
ページ: 133-40
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