研究概要 |
これまでに冠攣縮性狭心症(CSA)患者の培養皮膚線維芽細胞の膜分画PLC活性が亢進しており、PLC活性と冠動脈のbasal toneおよび収縮刺激に対する反応性が正の相関を示すこと、PLC活性亢進の主体はPLC-δ1であること、PLC-δ1の構造解析によりR257H亜型が存在すること、機能解析によりR257H亜型のPLC-δ1活性は亢進しており、アゴニスト刺激に対する細胞内Ca^<++>の上昇反応が大であることを報告してきた。PLC-δ1活性の調節因子として、PLC-δ1活性に抑制的に作用するsmall G蛋白のRhoAと、PLC-δ1活性を亢進させるP122蛋白が知られている。そこでCSA群144例、対照群148例を対象とし、P122とRhoAの蛋白および遺伝子発現を比較検討した。結果は以下の通りであった。 1.蛋白発現量:Western blot法にてPl22とRhoAの蛋白発現量を測定し2群間で比較した。P122はCSA群において有意に増加していた(2.8±0.7倍,p<0.0001)。RhoAには差を認めなかった。 2.P122遺伝子発現量:定量的real-time RT-PCR法によりP122の遺伝子発現量を測定したところ、CSA群において有意に発現量の増加を認めた(1.4±0.2倍,p<0.01)。 3.P122プロモーター領域の構造解析:プロモーター領域の塩基配列を直接的に解析した。男性CSA症例において、-228G→Aの変異が高頻度に認められた(p<0.05)。 4.-228G→A変異を有するP122プロモーターの機能解析:変異を組み込んだプロモーターについて、ルシフェラーゼアッセイにより機能解析を行ったところ、1.6±0.3倍(p<0.001)の活性亢進を認めた。 以上のようにCSA患者ではP122発現が亢進しており、これがPLC-δ1活性亢進の原因の一つと考えられた。
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