研究課題
基盤研究(C)
心筋リモデリングの進行を反映している機械的交互脈と、心室細動の前兆である電気的交互脈の関連を検討した。慢性心不全では機械的交互脈の易出現性が高まっており、大きな機械的交互脈は電気的交互脈を伴っていることを臨床例で明らかにした。また、多数の慢性心不全例を治療し、機械的交互脈が出現しやすい症例が心室細動により突然死するリスクが高いことを発見し報告した。陳旧性心筋梗塞および拡張型心筋症による慢性心不全症例について、診断的心臓カテーテル検査の際、ミラー圧トランスデューサーを用いて、左室圧dP/dtを記録するとともに、ペーシング法を併用して連結期収縮性特性、頻度収縮性特性、期外収縮後収縮増強反応、機械的交互脈出現閾値を測定した。機械的交互脈が持続している状態で左室圧容積曲線を求め、臨床例では左室収縮性と前負荷の両者が交互に変動していることを示した。これは一方で、交互脈の持続が前負荷依存性(Starlingの法則)だけでは説明できないことを示したことになる。慢性心不全の多数例について頻度収縮性特性を求め、新たな定量的指標、最高強度心拍数(peak force rate)と収縮性増強幅(force gain)を提唱した。この指標を用いて慢性心不全例の予後予測能を検討し、収縮性増強幅が予後指標となることを示した。これまでの検討では頻度収縮性特性の障害と交互脈出現性には強い関連がある。以上から、交互脈は慢性心不全症例にみられる「心筋リモデリングの進行」と「心室細動リスクの上昇」という二大死因の基盤をなす心挙動と考えられる。
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