研究概要 |
本研究では,血管傷害部位や心筋梗塞部位に特異的に薬物や遺伝子,細胞(血管内皮前駆細胞等)を作用させる輸送システムを開発し,心血管インターベンション後の内膜肥厚や血栓形成の抑制や心筋梗塞部位の修復が可能な新たな治療法の開発を目指している.申請者らは,血管平滑筋細胞や心筋細胞に新規の糖鎖結合分子が発現することを見出し,本年度では,この分子をクローニングを行った.またこの分子と糖鎖との相互作用を利用した薬物輸送システムの開発も試みた. 本年度の糖鎖結合分子のクローニングから,心筋細胞や血管平滑筋細胞に発現するN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)に結合する糖鎖結合分子を明らかにすることができた.その分子は,二次元電気泳動とアミノ酸シークエンス解析から細胞骨格分子ビメンチンおよびデスミンであった.一般的には,これらの分子は細胞骨格を形成する分子で細胞内にあるので細胞表面上に出現しているとは考えられていないが,申請者らはこれらの分子が,細胞表面上に出現しGlcNAcに対する糖鎖結合活性を有することを明らかにした.またGlcNAcを結合したリポソームを作製し,このリポソームが心筋細胞にGlcNAcを介して取り込むことを明らかにした.さらにこのリポソーム内に薬物封入させることで,薬物を効率的に心筋細胞内に取り込ませることに成功した.
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