研究概要 |
「虚血性心疾患に対する顆粒球コロニー刺激因子皮下注射による低侵襲療法の開発」についての研究成果については、すでに報告しているが、急性心筋梗塞患者(control群12名、G-CSF群12名)に対して、G-CSFを2-5μg/kgの皮下投与を行った結果、control群に比較してG-CSF群において梗塞1ケ月後の左室造影にて求めた左室駆出率が、統計学的に有意な上昇を認め、G-CSFの皮下投与は心筋梗塞後の左室機能を改善することを明らかにした(Suzuki K et al Circ J2006,)。さらに、G-CSFとスタチンの併用療法がより効果があるのではないかとの仮説のもとに、今回はとりあえず、ウサギ心筋梗塞モデルを用いて、スタチン単独投与が梗塞縮小効果を指標とする虚血心筋保護効果があるか否かについて検討した。ウサギ30分心筋虚血・48時間再灌流モデルにおいて、プラバスタチンは用量依存性に心筋梗塞サイズを縮小し、その梗塞縮小効果は、PKC阻害薬のchelerythrine, NOS阻害薬のL-NAMEによって完全にブロックされたことから、そのメカニズムとしてPKC活性化、NO産生増加が関与していると考えられた。さらに、プラバスタチン投与群では再灌流時に心筋間質内のNOマーカーであるNO_xが増加し、ハイドロキシラジカル産生抑制、スーパーオキシド産生抑制がもたらされることを明らかにした。すなわち、スタチン製剤であるプラバスタチンは、NO産生増加、酸素ラジカルであるハイドロキシラジカル産生抑制、スーパーオキシド産生抑制によって心筋硬塞サイズが縮小することを明らかにした。この研究結果については、2007年に報告した(Bao N et al. Circ J71:1622-1628,2007)。したがって、今後、考えられるG-CSFとスタチンの併用療法についてはその効果に期待が持てる。
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