研究概要 |
1.急性心房圧負荷モデルを用いた心房細動に対する各種薬物の作用 近年、開胸術後の心房細動再発の抑制にスタチン製剤の前投与が有効であるという報告が続いており、本研究においてもスタチンが心房細動の受攻性に及ぼす影響について検討を開始した。水溶性のスタチンとしてプラバスタチン(10-30μM)を、脂溶性のスタチンとしてロバスタチン(1-3μM)を用いてその評価を行った。その結果、スタチンは有意に心房細動の受攻性を減少させることが明らかとなってきた。さらに、スタチンがRhoAの活性化に及ぼす影響についてウエスタンブロットによる解析で調べた結果、心房の伸展刺激で活性化されたRhoAはスタチン添加後にその活性が減弱しており、Rho-Rho kinaseシグナル伝達経路の関与が強く示唆された。また、TRP(transient receptor potential)チャネルのサブファミリーであるTRPCが伸展刺激感受性チャネルを形成することが報告されており、TRPチャネルを阻害する薬物(SKF-96365, BTP-2)の作用についても検討を開始した。SKF-96365(1-3μM), BTP-2(10-30μM)はこのモデルにおける心房細動の受攻性を有意に減少させることが判明した。 2.活動電位光学マッピングによる興奮伝播の解析 心房内圧の上昇が興奮伝播に影響を与える影響について検討した。定常刺激(CL,200ms)では、高頻度刺激(CL,80ms)を行った場合、高圧時には興奮伝導の不均一性が増加することによって、興奮パターンに不均一性が生じ、その結果としてリエントリーが形成されることが画像解析により確認された。またスタチンやTRPチャネル阻害剤の投与により心房内圧上昇による活動電位の短縮が減弱し、この結果は有効不応期の変化と良く相応した。
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