研究概要 |
本研究のためのデータ収集の基盤となる2000年〜2002年に初回冠血行再建術を施行した急性心筋梗塞以外の冠動脈疾患例を登録・追跡するレジストリー研究への最終的な症例登録施設数は30施設であった。平成18年度には同コホートの全9,877症例の登録を完了した。登録症例の中で、一般に冠血行再建術施行の際に冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス手術(CABG)の両者が選択可能であると考えられる患者群として、左主幹部病変を除く80歳未満の多枝疾患患者4,879例(PCI=3,275例;CABG=1,604例)を対象にPCI群とCABG群でその予後を比較した(平均観察期間1314日,2年追跡率95%)ところ、5年生存率はPCI群:88.7%,CABG群:87.5%(p=0.60)と差が無かった。べ一スラインでの合併症、保有冠危険因子、腎機能や心機能、冠疾患の重症度などで補正した場合も、CABG群の死亡に関するPCI群に対しての相対危険度は0.92(95%C. I. 0.82-1.04,p=0.19)と両群間に有意差を認めなかった。他の心血管イベントに関しても解析を行ったが、CABG群に比べPCI群では、脳血管障害の発症が少なく(PCI群7.0%対CABG群8.3%,P=0.01)、心筋梗塞の発症(PCI群5.9%対CABG群3.5%,P=0.02)と再冠血行再建術の施行(PCI群55%対CABG群13%,p=0.0001)は有意に多かった。これらの結果から、左冠動脈主幹部病変を除く80歳未満の日本人多枝冠動脈疾患患者の冠血行再建術後の長期予後は冠血行再建法による明確な差が無いことが示された。これらの結果は、第71回日本循環器学会学術集会(平成18年3月、神戸)にて発表を行った。
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