研究概要 |
わが国における実地臨床の場でのベアメタルステントによるPCIとCABGの長期成績と治療後患者の予後を明らかにするために、従来、冠動脈バイパス手術の適応となるような多枝疾患患者5,420例を対象に、PCI群とCABG群とで予後の比較を行った。その際、生存率分析においては対象を75歳以上と75歳未満の2群に分けての解析を行った。 その結果、全症例を対象としたLog-rank testによる解析では、3年生存率がCABG群で91.7%、PCI群で89.6%(p=0.26)と有意差を認めなかったものの、患者背景を補正したCox比例ハザードモデルによる多変量解析の結果では、CABG群のほうが生命予後が良い傾向にあった[ハザード比(95%信頼区間):1.23(0.99-1.53),p=0.06]。しかし、対象を75歳以上と75歳未満の2群に分けると、75歳以上の群では同様にCABG群のほうが生命予後が良い傾向がみられたが[1.37(0.98-1.92),p=0.07]、75歳未満の群では全く差がみられなかった[1.09(0.82-1.46),p=0.55)]。 一方、術後3年での再血行再建術の回避生存率に関しては、全症例での比較で、CABG群90.2%、PCI群51.7%と大きな差が見られた。 本研究の結果、ベアメタルステント時代における日本人の初回冠血行再建術後の生命予後は、後期高齢者を除けば冠血行再建術法によらず非常に良好であることが示された。再血行再建術施行率にはCABGとPCI間に大きな差があり、本研究の結果、PCI後の薬剤溶出性ステント導入後の課題も明らかになった。
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