チオレドキシン(thioredoxin)は、還元作用や抗酸化作用を示す酸化/還元(レドックス)制御蛋白のひとつである。既に申請者らは、ラットでの自己免疫性心筋炎モデルで、活性酸素の過剰産生と反応性のチオレドキシンの心筋内でのoverexpressionを明らかにした。さらに、チオレドキシントランジェニックマウス心筋炎での治療過程での骨髄由来の再生心筋の存在と、その再生心筋が心機能保持に働いていることが明らかになりつつある。 そこで今回我々は、レドックス制御系が心筋再生に関与しているとの予備的結果から、チオレドキシン・トランスジェニックマウスを用い、心筋炎・心不全に対するレドックス制御を介した心筋再生療法の可能性を検討した。本年度は、非虚血性モデルである急性心筋炎で心筋再生療法の有効性を検討した。 (i)確立されたモデルであるマウス(メス)のミオシン感作型心筋炎を作成・用意した(ブタ心筋ミオシン皮下注、のちフロイント・アジュバンドで免疫強化)。 (ii)別に、マウス(オス)骨髄細胞(5×10^6)を既報の方法で調整・準備した。 (iii)(i)で作成したマウス心筋炎の14日目に、(ii)で用意した骨髄細胞を尾静脈より移注した(移注群)。別に対照(未移注群)と、G-CSF(granulocyte colony-stimulating factor)皮下注(50μ/kg、毎日)群マウス(G-CSF群)を作成した。すなわち、 a)コントロール(未移注)群(n=10) b)骨髄細胞移注群(n=10~15) c)G-CSF群(n=10~15) の3群を設けた。 その結果、G-CSF群、あるいは骨髄細胞移注群で心筋炎の程度の軽減と心機能の保持、さらには骨髄由来細胞の心筋内へのhomingが証明された。
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