研究概要 |
循環器疾患の末期像である心不全は、心ポンプ機能の破綻・心肥大の結果、心臓の収縮力や拡張力の低下をきたし、身体の組織に十分な血液を送れない状態である。チオレドキシン(thioredoxin, TRX)は、還元作用や抗酸化作用を示す酸化/還元(レドックス)制御蛋白のひとつである。チオレドキシン・トランスジェニックマウス心筋炎での治癒過程での骨髄由来の再生心筋の存在と、その再生心筋が心機能保持に働いていることが明らかになりつつある。そこで本年度は、前述したようにレドックス制御系が心筋再生に関与しているとの予備的結果から、チオレドキシン・トランスジェニックマウスを用い、心筋炎・心不全に対するレドックス制御を介した心筋再生療法の可能性を検討した。 TRX+およびTRX-マウスで既法に則りミオシン感作、心筋炎・心不全を作成した。同マウスに、それぞれG-CSFの皮下注射(50μg/kg、毎日)および同系マウスの骨髄細胞(5×106)を移注したグループを作成した。 TRX^-マウスに比しTRX^+マウスでの心機能の改善が示された。さらにG-CSFや骨髄細胞移注処置で、それぞれ同系のマウス群に比し心室リモデリングの抑制とより一層の心機能の改善が得られた。以上よりレドックス制御による心筋再生による心不全の治療の可能性が明らかになった。
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