研究概要 |
<目的>アンジオテンシンII(AngII)とノルエピネフリン(NE)負荷高血圧において,心筋内酸化ストレス、心肥大と心機能に対するToll-like receptor 4(TLR4)の役割を比較検討した。 <方法>wild-typeマウス(WT)とTLR4欠損マウス(TLR4-/-)にAngIIまたはNEを2週間持続皮下投与を行った。薬剤投与後、経胸壁心エコーにて、左室壁厚(心室中隔、後壁)、左室拡張末期径(LVEDd)、左室収縮末期径(LVESd)、左室内径短縮率(%FS)及び左室駆出率(EF)を計測した後、心重量を測定した。またMasson-trichrome染色を用いて、心筋内細動脈の壁厚内腔比(W/L比)と血管周囲線維化率を測定し,dye hydroethidine(DHE)染色を行い心筋組織におけるsuperoxisdeの発現を測定した。 <結果>WTとTLR4-/-ともに薬剤投与前の血圧と心機能に有意差はなかった。AngII及びNE負荷により、WTとTLR4-/-ともに同等に収縮期血圧が上昇した。LVEDdは薬剤投与前後で両群に差はなかったが,AngII負荷において、WTと比べてTLR4-/-で%FSの低下が抑制され、LVESdも縮小していた(p<0.05)。またTLR4-/-はWTと比較して左室壁厚ならびに心重量の増加がともに抑制され(p<0.05)、さらに心筋内細動脈のW/L比と血管周囲線維化率の増加も抑制された(p<0.05)。心筋におけるsuperoxisdeの発現はAngIIあるいはNE負荷を行わない場合と比べて両群でともに増加したが,AngII負荷発おいてTLR4-/-はWTと比べてsuperoxisdeの増加が抑制された(p<0.05)。一方、NE負荷ではWTあるいはTLR4-/-ともにこれらの指標に有意な差は認めなかった。 <結論>AngII負荷高血圧において、TLR4は心筋内酸化ストレスを亢進させ、心肥大、心筋内血管リモデリング,線維化と左室収縮不全を惹起する重要な規定因子である可能性が示唆された。
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