研究課題
心筋細胞の虚血再灌流障害に対する耐性の成立にコネキシン43が関与する可能性とその機序を、心筋細胞由来のH9c2細胞を用いて検討した。D-Ala^2-D-Leu^5-enkephalin (DADLE,300nM)を用いたδ-オピオイド受容体刺激、IGF-1(10nM)を用いたIGF受容体刺激は、いずれもH9c2細胞においてPI3K-Aktの活性化ならびにglycogen synthase-3β(GSK-3β)リン酸化を惹起し、虚血再灌流障害を擬似するために用いた過酸化水素負荷による細胞壊死ならびにアポトーシスを有意に抑制した。siRNAを用いてコネキシン43の発現を約80%抑制すると、δ-オピオイド受容体刺激によるAktならびにGSK-3βリン酸化、過酸化水素負荷による細胞死の抑制はほぼ完全に阻害された。一方、IGF受容体刺激によるPI3K-Akt-GSK-3β経路の活性化ならびに細胞保護効果にはコネキシン43発現抑制の影響が全く認められなかった。共焦点レーザー顕微鏡を用いた免疫細胞染色ではH9c2細胞の細胞膜ならびにミトコンドリアにコネキシン43の存在が示され、いずれもコネキシン43siRNAにより発現が抑制されていた。これらの成績よりコネキシン43は細胞保護シグナルであるPI3K-Akt-GSK-3β経路のうちG蛋白連関受容体を介したものの活性化に特異的に寄与していると考えられた。こうした役割を担っているコネキシン43が細胞膜上のヘミチャネルであるのか、ミトコンドリアのコネキシン43であるのかについて細胞膜非透過性のギャップ結合阻害薬であるGAP27を用いて現在解析中である。
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