研究概要 |
平成18〜19年度の主要な研究知見は以下の1〜4のように総括することができる。 1)心筋虚血はギャップ結合蛋白であるコネキシン43(Cx43)とSrc,PKC,p38MAPKとの結合を増加させるが、虚血プレコンデイショニング(PC)はCx43-PKC-εの結合を促進、Cx43-p38MAPK-α複合体形成を抑制、Cx43-Src結合には有意な影響を与えない。2)コネキシン43(Cx43)は、PKC-εとの結合とそのSer368リン酸化によりギャップ結合透過性を抑制し、虚血再灌流障害の心筋間伝播を抑制する。3)PCによるp38MAPK-αの活性抑制ならびにCx43-p38MAPK-α複合体形成の抑制は、PKC-εによるギャップ結合透過性の抑制を部分的に解除する役割を有し、虚血早期における心筋細胞の電気的結合を維持する役割を担っている可能性がある。4)D-Ala^2-D-Leu^5-enkephalin(DADLE,300nM)を用いたδ-オピオイド受容体刺激は心筋細胞におけるAktならびにGSK-3βリン酸化をもたらし、酸化ストレスによる細胞死を抑制する。これらのDADLEの効果はsiRNAを用いてCx43の発現を抑制することにより阻害される。5)IGF受容体刺激によるPI3K-Akt-GSK-3β経路の活性化ならびに細胞保護効果にはコネキシン43発現抑制の影響が全く認められない。6)δ-オピオイド受容体と同様にG蛋白連関受容体であるエンドセリン受容体刺激によるPI3K-Akt-GSK-3β経路の活性もCx43の発現抑制によって阻害される。 以上の成績から、心筋虚血によるギャップ結合機能調節にはCx43を標的としたSrc,PKC-ε,p38MAPKがそれぞれ特徴的に関与するが、PCによるギャップ結合の抑制にはPKC-εとp38MAPKが拮抗的に作動していること、またCx43にはギャップ結合蛋白以外の機能として、G蛋白連関受容体によるPI3K-Akt活性化に必須の役割を担っていることが明らかとなった。このようにCx43には細胞障害の伝播ならびにその抑制を担う分子としてまた細胞保護シグナルの伝達する分子としての重要性があると考えられる。
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