研究概要 |
致死性不整脈の発生に先立って発生する電気的交代現象における細胞内カルシウム(以下Ca)動態異常の関与を検証するため、ラット摘出灌流心における心筋細胞のCa動態と膜電位変化につき単一細胞レベルでの光学的同時記録を試み、以下の成果を得た。 1.2波長高速共焦点レーザ顕微鏡システムの確立 これまでCa動態解析に用いていたin situ共焦点レーザ顕微鏡の走査系を高速化し、蛍光を2波長成分に分離するシステムを構築し、ラット摘出灌流心の細胞内Ca(Fluo4/AM)動態と細胞膜電位(RH237)の細胞レベルでの高速・同時記録に成功した。その結果、正常心では興奮に伴い個々の心筋で均一な活動電位(action potential,AP)とCa^<2+>濃度の一過性上昇(Ca transient, CaT)を生じた。 2.Ca動態の変化に伴う細胞膜活動電位変化の光学的記録 (1)房室解離により徐脈に陥った心筋では個々の細胞内でCaWが散発したが、CaWには有意な脱分極を伴わなかった。これに対し、心臓を低K灌流下にisoproterenol投与し、高頻度駆動すると、撃発活動に続いて振動性のCaWと脱分極が発生した。こうした撃発活動は、ryanodineやNa-Ca交換機構阻害剤SEAO400により消失した。 (2)Ryanodineにより筋小胞体からのCa放出を抑制するとCaTの振幅は漸減したが、明らかな交代現象の誘発は困難であった。一方、心臓を4-5Hzの高頻度で駆動すると、CaTの振幅の交代性増減が生じ易くなった。しかしCaTに伴うAPには一拍毎の波形に明らかな変化は認められず、膜電位の空間的不均一性も明らかではなかった。 以上の結果より、撃発活動におけるCaWの役割が明らかになった。Ca交代現象に伴う心筋のAPは、心臓内では周囲の細胞との電気緊張性機序により相殺される可能性がある。
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