研究概要 |
昨年度までの研究で,エンドセリン-1(ET-1)がETA受容体,プロテインキナーゼC(PKC),カルモデュリン依存性キナーゼ(CaMKII)を介してラット心室筋のL型Ca電流を増大されることを示した.これまでに用いたCaMKII阻害薬KN-93は非特異的な作用もあるので,他のCaMKII阻害薬であるAIP(10μM)存在下における検討をおこなった.細胞を1時間AIPで処理し,AIP存在下でET-1を投与しても,ET-1はL型Ca電流を増大させなかった.KN-93の効果と併せて,ET-1の効果がCaMKIIを介することが再確認された.また,心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)はエンドセリンの産生を抑制するが,エンドセリンシグナルに対する影響は検討されていないので,ETA受容体-PKC-CaMKII-L型Caチャネルの系をANP(1μM)が修飾するかを検討した.ANP存在下でもET-1はL型Ca電流を増大させた.ANP自身はL型Ca電流を変化させなかったので,次にL型Ca電流がET-1で増大した後にANPを投与したが,やはりANPは電流を変化させなかった.この事から,ETA受容体-PKC-CaMKII-L型Caチャネルの系にANPで活性化される系(プロテインキナーゼG(PKG))は関与していないと考えられた. 本年度は最終年度であり,ET-1によるL型Ca電流増大のメカニズムをまとめて,国際生理学会,米国心臓学会(AHA)で発表した.これらの内容を米国生理学会誌(American Journal of Physiology誌)に投稿し,受容された.
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