研究概要 |
腎臓で産生されるエリスロポエチン(EPO)は赤血球の前駆細胞の増殖・分化に必須のサイトカインであるが、最近、EPOレセプターが心臓にもあり、抗アポトーシス作用を介して虚血心筋保護効果があることが報告されている。 本研究目的はDOX(ドキソルビシン)誘発性心筋症モデルならびに大型陳旧性心筋梗塞由来心筋症であるマウスを用いて「EPOは虚血心筋保護効果のみならず、非虚血性心筋症(抗ガン剤誘発性心筋症および大型陳旧性心筋梗塞由来心筋症)に対しても心機能改善効果を持ち、そのメカニズムは抗アポトーシス作用ではなく、GATA4・COX2の発現を介した抗心筋細胞変性作用、抗線維化作用、抗細胞浸潤作用である。」という仮説を証明することである。 その結果以下の結論を得た。 【研究1】EPO(5,000U/kgは抗ガン剤、DOX誘発性心筋症モデルマウス(10週齢の雄C57BL/6Jマウス)の左室の拡張によるリモデリング、収縮機能等の心機能ならびに予後を著明に改善した。さらにEPOは抗ガン剤誘発性心筋細胞の変性・線維化・細胞浸潤を予防した。アポトーシスのマーカーであるTunel陽性心筋細胞はDOX誘発性心筋症モデルマウスならびEPO投与心筋症モデルマウスの心筋細胞ではみられなかった。このことはこのDOX誘発性心筋症の発症機序にアポトーシスは関与しないことを示すと共にDOX心筋症に対するEPO効果の成因はアポトーシスの予防ではないことを明らかにしている。 【研究2】EPO(1,500U/kg,週2回)の4週間投与は梗塞後6週間後の大型陳旧性心筋梗塞由来心筋症モデルマウス対し、左室の拡張によるリモデリングを予防しかつ収縮能等の左心機能を改善した
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